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💴もしもゼロから宿を独立開業するとしたら?

✍️ 小林 拓水

もしも度:💴💴

いよいよアフターコロナの時代に突入し、観光にも勢いが戻りつつある今。「宿を独立開業したい!」という声が私の回りから聞こえるようになりました。

でも、実際に「宿をつくる・運営する」と言っても実際はわからないことばかり。

実際に宿を独立開業するまでにはどんな苦労があるの?開業してからはどんな生活が待っているの?……そんな気になる宿運営の裏側を聞くために、ベンチャー企業の営業担当を辞め、埼玉の秩父地域を中心に一棟貸切宿ブランド「teihaku」を運営する杉本 諒介さんに話を聞きました。

エリアの下調べに損益計算書づくり……準備は徹底的に!

ーまずどうして宿を開業しようと思ったんですか?

杉本さん:「宿をやりたい」というよりも「会社から独立したい」と思っていたのが大きいですね。でも、営業一筋だった自分には専門的なスキルがない。それでも自分にできるビジネスとして思い浮かんだのがたまたま宿だったんです。

ーとはいえ、いきなり未経験から宿を独立開業するとなると不安はなかったんですか?

杉本さん:もちろん宿泊業で食べていけるようにするために、準備は万全に行いましたよ。たとえば、宿を開くにあたってもっとも大切なのは立地。都内から1時間半で行けるエリアを中心に埼玉、千葉、神奈川の各地を巡りました。その中で自分が好きな「きれいな川が流れている風景」があって、商圏としても見込みがありそうな場所として秩父を選んだんです。

ー商圏として見込みがある、とは?

杉本さん:たとえば、地域の人気ホテルの宿泊状況を予約サイトから調べるんです。そこで部屋が埋まっているのであれば地域として観光需要があるということ。逆に地域で人気が高そうなホテルでも部屋が埋まっていなければ商圏としては厳しい。

ーなるほど。

杉本さん: 商圏として見込みがあることがわかったら損益計算書をつくる。インターネットでつくり方を調べたり、すでに宿を運営している先輩経営者に聞きに行ったり。1円単位で年間の資金計画を試算したら「これなら食べていけそうだ」とわかったので、自信をもって次のステップに行けました。

秩父の原風景の中に佇む杉本さんの宿

計画がひっくり返される前に保健所に相談を!

ーそういえば、宿を運営するには許可も必要ですよね?

杉本さん:まさにそれが次のステップ。宿を運営するためには「旅館業」の許可を取得する必要があります。でも、保健所に行けばいろいろ相談に乗ってくれるので大丈夫。少し手続きは面倒だけど、自分が知らなかった意外な盲点にも気づかせてくれることがあります。

ー意外な盲点……?

杉本さん:自治体によっては用途地域の兼ね合いで、宿を運営できないエリアや建物があるんです。実際に物件を契約したり購入してから気づくケースもよく聞くので、エリアや建物の目星がついたら早めに保健所に相談に行くことをおすすめします。

ファミリーでもゆったりくつろげるリビングもDIYで。

ー実際に物件を契約してから「宿ができない」となったらこわすぎる……ちなみに杉本さんは物件はどのように探したんですか?

杉本さん:不動産屋に聞いたり、地域を見回って気になった空き家を直接訪ねたりしました。近所の人に聞けば、空き家の持ち主さんを紹介してくれることもあるので、そこからは直接条件面を交渉していく流れですね。

ーいざ物件が決まったら次は改装ですよね。杉本さんはどうやって進めましたか?

杉本さん: 基本的にはDIYです。家づくりに関するYoutube動画を参考にしてスキルを学び、どんどん手を加えていきました。ただ今、新たに準備している2棟目の宿に関しては、規模が大きくて手が回らないので一部工事会社に依頼しています。

本格的なお風呂は宿のおすすめポイント

ーエリアを決めて、物件を契約して、許可も取り、改装も終わった……となると、いよいよオープンですか?

杉本さん:はい。ただ、もちろんオープンしただけではお客さんは来ません。だから、大手旅行サイトに登録したり、自社サイトやSNSで宣伝したりするのも大切な仕事。そこまでしたら、あとは予約を待つだけですね。

ー実際、どのくらいの期間で事業は軌道に乗りましたか?

杉本さん:運良くオープンしてすぐに土日の予約が埋まるような状況でしたね。1,2ヶ月後には「これで生活していけるな」という手応えを得ました。地方の空き家を借りたので家賃を安く抑えられたのも大きくて、1ヶ月で数組宿泊してくれれば経費もほぼペイできるんです。

ーここだけの話、初期投資はどれくらいかかったんでしょう……?

杉本さん:補助金や融資にできるだけ頼らずにできる範囲で進めたかったので数百万程度です。ただ、工事会社を入れた2棟目に関してはその倍くらいかかっていますね。

1日30分稼働!?宿運営の日常

ー実際に宿をオープンしてからの働き方を教えてください。

杉本さん:今のところ宿の管理はほぼチェックインとチェックアウトの対応、そして掃除のみ。チェックイン・チェックアウトの対応はそれぞれだいたい15分程度で終わります。掃除は1棟全部一人で隅々までやろうと思ったら半日はかかりますが……。ただ、掃除に関してはパートさんを雇ってお願いすれば、自分の稼働はほぼチェックイン・チェックアウト対応の30分のみということになりますね。

ー1日30分稼働……夢のような話だ。

杉本さん:でも、掃除をしてくれるパートさんがなかなか見つからなくて。1棟を掃除するのに1日2人程度。それも毎日お願いするわけにはいかないのでシフト制にしたとして最低4,5人に手伝ってもらう必要があります。もしかしたら宿を運営をする中で人手不足は意外と課題なのかもしれません。

ー宿を運営するのにも人手が必要なんだなぁ……。

杉本さん:あとは、自分の長期の旅行や出張の予定は立てづらくなりましたね。1組お客さんが来るとチェックインから翌日のチェックアウトまで2日間拘束されるので。ただ、チェックイン・チェックアウトの対応をしてくれる管理者もいれば、僕も身動きを取りやすくはなります。

ー拘束時間が30分だけだったらいろいろな人が「やりたい」と手を挙げそうですが。

杉本さん:実はライターやデザイナーなど何かしら自分の仕事を持っている人が管理者になってくれたら良いなぁと思っているんですよ。チェックイン・チェックアウトの対応さえ終えたら思う存分仕事ができますし、「ライターがいる宿」「デザイナーがいる宿」とかおもしろそうじゃないですか。本各地のローカルで活躍しているクリエイターさんが秩父にやってきて運営してくれたらいいなぁと思っているんですよ。

ーとってもおもしろそう……!

杉本さん:気になったらいつでも連絡してくださいね(笑)。

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✍️書いた人

小林拓水(こばやし・たくみ)

「toishi」という屋号で活動しているコピーライターです。1990年生まれ。長野と東京を行ったり来たりしながら暮らしています。パンが大好き。