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もしも身に覚えのないパワーハラスメントで訴えられたら

✍️ 安斎 高志

もしも度:😊😊😊

部下への指導や指示には気を遣おうと心に決めている。何ならどちらが部下かわからないほどの丁寧な言葉遣いが必要。個人の成績や業績の低迷を指摘するなどもってのほかだと思っている。

そう、私はパワーハラスメントという言葉が怖い。

しかし、パワハラの境界線は難しい。上司の行為がパワハラかそうでないかで口論になって別れたカップルがいると聞いたことがある、という話を耳にしたことがあると友人が言っていた気がする。

しかし、ここまで恐怖を感じるのは、境界線がわからないからだ。どこからがハラスメントなのかきちんと知っておけば、こんなに怖がる必要もなくなるだろう。私は、ハラスメント問題に詳しい「すそ花法律事務所」の扉を叩き、代表の有吉美知子弁護士に話を聞いた。

ちなみに付け加えておくと、私に部下はいない。しかし、人生は「もしも」の連続だ。いつ部下ができてもおかしくない。備えて困ることなどないのだ。

境界線は「人格」と「行為」

–手を出したり大声を上げるといった行為がアウトなのはわかりますが、部下への指導とハラスメントの境界がわからずにいます。

有吉さん:悩まれる方は結構いらっしゃいますね。基本は「人格を否定するのはハラスメント」、「行為を否定するのは指導」という考え方でいいと思います。

–たとえば1日5件の訪問ノルマを達成できなかったら?

有吉さん:行為を否定するのはありです。

–「5件くらいなら頑張りなさいね」は言ってもいいってことですか?

有吉さん:それは言わないと、本人のためにならないですし、会社だって存続しないといけないですから(笑)

–「のろま!」とか「ぐず!」と言ってしまうと…?

有吉さん:アウトですね。

非を認めないからこじれることが多い

–「人格」と「行為」か。何となく線引きできそうな気がしてきました。とはいえ、世代間のギャップもありますし、見解の相違というものもあります。身に覚えのないパワハラで訴えられたらどうしたらいいですか?

有吉さん:本当に、身に覚えがなかったら、「録音があるかどうか」、「いつどこでパワハラがあったか」、「他に聞いていた人はいないか」、といった点を確認してください。ただ、もし弁護士を通していたら、何かしら証拠があると考えた方がいいですね。

–なぜですか?

有吉さん:裁判で立証できるものがない限り、弁護士は裁判という方法を選ばないことが大半です。逆に、弁護士が動いているということは何らかの証拠がある可能性が高いです。

–確かにそうですよね。裁判のプロがわざわざ負け戦を仕掛けないですよね。

有吉さん:まずは、先方がパワハラと指摘している自分の行為を、先ほどの「人格の否定」と「行為の否定」という境界線に照らし合わせてみる。そして、人格否定ととられても仕方がない発言があったら、とにかく「すぐ」謝罪することです。

–すぐ謝罪ですか。シンプルですね。

有吉さん:こうした問題がこじれる原因は、「非を認めないから」というケースがとても多いです。お金がほしいというより、自尊心を守りたいから訴える人もたくさんいますから、丁寧な謝罪があれば収束することもあります。

「定期的に」「短い」コミュニケーションを

–なるほど。とはいえ、訴えられないようにしながら緊張感は保つのは難しそう…。どうしたら未然に防ぐことができますか?

有吉さん:組織を維持するには、厳しさも必要ですからね。ただ、客観的に見ていると、問題は指導の厳しさよりも、コミュニケーション不足のところが多いです。

–なるほど。最近は、飲みニュケーションもハラスメントになりかねないと思うと誘いづらくて…。

有吉さん:お酒を飲む必要はありませんよ。「定期的に」「短い」コミュニケーションを取ることをおすすめします。

–「定期的」で、「短い」ですか。

有吉さん:はい。定期的だと部下の方も言いたいことを準備できますし、短いコミュニケーションなら比較的気軽に臨めますしね。

–確かに! 法律のことをお聞きしに来たのに、チーム・マネジメントのコツまで教わってしまいました。ありがとうございました!

弁護士法人 すそ花法律事務所 長野市妻科962 有吉ビル3階 https://www.susobana-law.jp/

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✍️書いた人

安斎 高志(あんざい・たかし)

コピーライター、編集者、映像ディレクター。合同会社案在企画室CEO(ちょっとイイこというおじさん)。二児の父。もしもに関する想像力のたくましさは極めつけの折り紙つき、かつ保証つきの太鼓判つき。