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もしも2拠点生活をしてみたら

✍️ 小林 拓水

もしも度:🚄🚄🚄

都市と地方を行き来する「2拠点生活」。

昨今、このライフスタイルが注目されていることに、疑いを差し挟む余地もないだろう。

筆者もコロナ禍が訪れる前から、仕事や暮らしの主な拠点である東京と地元・長野を頻繁に往復する暮らしを続けていて、気づいたら2拠点生活に近しい日々を送っていた。今回は、そんな2拠点生活に足を踏み入れて感じたことについて、主観を交えながら紹介したいと思う。

人それぞれの2拠点生活スタイル

まずは、私の2拠点生活スタイルから紹介したい。
2拠点生活には、人それぞれのスタイルがある。「持ち家×賃貸」「賃貸×賃貸」「賃貸×実家」「賃貸×シェアハウス」など。現状、筆者は「持ち家×ゲストハウス」というスタイルで2つの地域を往来している。都内では購入したマンションに住み、長野ではゲストハウスに滞在するといったイメージだ。以前は、長野県が実施しているおためし移住制度を利用して、自治体が提供してくれた空き家に住んでいたこともある。

▲当時住んでいた、長野市内の空き家。築年数は古いけれど、庭付き4DKで広々。

往来の頻度や過ごす日数は月によってまちまちだが、おしなべるとおおよそ週に1〜2日は長野、それ以外は都内といったバランス。長野にいるときは、日帰りや1〜2泊での滞在が多く、頻度も不定期であるため、まだ賃貸アパートを借りるまでには至っていない(だから、厳密には“1.5拠点生活”なのかもしれない)。もう少し頻度が増えたら賃貸アパートの契約を検討しようと思い、SUUMOを眺める日が続いている。

ガンガン減る、お金と体力

まず実感しているのが、2拠点生活は大変なことも多いということ。ざっと思いつくだけでも、下記のようなことが挙げられる。

〇めちゃくちゃお金がかかる。

考えなくてもわかっていたことだけど、もちろんお金がかかる。

東京⇄長野を新幹線で1回往復するだけで約16000円の出費。長野のゲストハウスに滞在すると、さらに1泊だいたい4000円。「せっかく滞在しているんだし」と、おいしい飲食店を開拓したり、温泉やサウナに入ったり、夜にスナックに行ったりしてしまうと、1回の往復で3万円以上使ってしまう。

▲しばしば訪れる長野市内のスナック「夜風」

もし賃貸アパートを借りるとなったら、さらに家賃や水道光熱費といった金額も増えるだろう。毎月のクレジットカードの請求額を見るのが、とにかくこわい。それでもなお価値を感じられるだけの体験を得て、一生懸命稼ぎ、毎月の出費にも動じない胆力をつけることが必要だ。

〇体力を使う。

移動時間が多くなると、案外体力を消耗する。

東京の最寄り駅から新幹線の駅にたどり着くには、混雑した電車に揺られ、乗り換えで階段を上り下りしないといけない。やっと新幹線に乗り込んでも、1時間以上も同じ姿勢で座っていると、腰もそれなりに痛くなる。

いい整体師を都内でも、長野でも、見つけることが今年の目標だ。

〇移動手段どうする?問題

都内は電車の便がいいから移動に不便を感じることは少ないが、長野だとそうはいかない。クルマ社会の長野では、マイカーを保有していないとどうしても不便なことはある。また、市街地で行動するにも徒歩だけではなかなか行動範囲が広がらないのも、地味に悩みの種になっている。

しかし、そんな中でも、2023年9月から長野市でレンタサイクル事業がスタートしたのは朗報だ。しかも、長距離移動にも便利なe-bikeも用意されているため、移動手段問題に光が差しつつある。

それでも、やっぱり続けたい2拠点生活

大変なこともあるが、それでも二拠点を往復する暮らしを送り続けているのは、そのライフスタイルに価値を見出しているから。2拠点生活で生まれるメリットも、もちろん実感している。

〇出会いやチャンスが増える

東京と長野、それぞれにコミュニティがあることで、新たな出会いやチャンスは2倍になる。フリーランスとして働く筆者は、東京と長野、それぞれに商圏を持っていることでより多くの案件に恵まれた。長野の事例を都内で紹介したり、都内の案件で長野のことを提案したり、案件同士の相乗効果も生まれている。

▲長野市内のイベントスペースに出展したことも。

〇案内できる地域が増える

一方の地域のことを、他方の地域の人に伝えることも増えてきた。「長野で〇〇を楽しむんだったら、あそこの店」「都内だと、あのエリアがおもしろい」など。自分の好きなエリアやスポットを紹介できるのは、シンプルに嬉しい。

▲長野市内で通っているカレーの名店「山小屋」
▲都内で通っているレバニラ定食専門店「kei楽」

〇子どもの世界を広げられる

普段、都内で一緒に暮らしている娘を連れて長野に行くこともある。

感受性豊かな時期に、さまざまな場所に行き、さまざまな人に出会い、さまざまな体験を得ることは、きっと彼女の視野を広げることにつながるはず。都心の賑やかな世界と地方のゆったりとした世界。異なる世界線に触れてほしいと思う。

また、東京にいるときとは違う、長野にいるときの自分の背中も見せながら、生き方のサンプルを増やしてくれたらと願っている。

▲長野市内で開催されたアートワークショップに娘と参加。

〇スイッチの切り替えができる

東京には、多くの情報や機会が集まっている。好きなアーティストのライブや受講したい講座など、求めればいくらでも機会が転がっている。新しいショップや気になるイベントの情報は、毎日のように入ってくる。刺激を得たり、キャリアを重ねるには、これとない環境だ。

一方で、長野には、ゆったりとした時間が流れている。人通りも都内ほど激しくないし、長野駅から徒歩圏に源泉100%かけ流しの温泉「うるおい館」があるのもかなりいい。東京で浴びた情報や刺激をいったん手放す時間を得ることで、思考もクリアになる気がしないでもない。

あと、「夫」「父」「フリーランス」「コピーライター」……東京にいるときは、つい背負っている肩書きや役割を意識してしまいがち。だけど、地元である長野にいると、何物でもない「小林さんちの拓水くん」に戻れる感覚がある。アイデンティティを再確認できる場所としても、長野という拠点があることは重要だ。

まとめ

とはいえ、僕の2拠点生活は、ほんの一例。きっと賃貸アパートを借りたりしたら、いいことも大変なことも含めて、もっと違う世界が広がっているのかもしれない。

ただ、今の僕には、この“一歩手前”のスタイルがちょうどいい。「いつもいる場所」としての東京、「たまにいく場所」としての長野。そんなバランスで、2つの地域の行き来を楽しんでいる。

いずれにせよ複数のコミュニティがあることは、精神的な安定材料につながるはずだ。人それぞれ、自分のスタイルに合った2拠点生活が実践されることを願う。

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✍️書いた人

小林拓水(こばやし・たくみ)

「toishi」という屋号で活動しているコピーライターです。1990年生まれ。長野と東京を行ったり来たりしながら暮らしています。パンが大好き。