SHARE

  • Twitterのリンク
  • facebookのリンク

Moshipedia

もしもスイーツを楽しみながら蘊蓄を傾けたくなったら

✍️ 海野 紀恵

もしも度:🍡🍡🍡

華やかなスイーツに心躍る季節

「甘いものを楽しんでいるときに蘊蓄(うんちく)なんて!」という方が多いと思います。でも、少しだけ時間をください!

僧侶になって7年。ずっと気になっていたことがあります。それは<仏教と甘いものは、とても縁が深いのではないか>ということです。

お寺で生まれ育った私。幼い頃を振り返ると、スーパーでお菓子を買ってもらった記憶がほとんどありません。なぜなら<家にたくさんお菓子があるから>。お寺には<お供え>として多くの御門徒さんやお客様がお菓子を持ってきてくださいます。もちろん仏様へお供えするのですが、そのあとは<お下がり>として寺族(お寺を護る家族)がいただいたり、お参りに来られた皆さまへのお茶菓子としてお出ししています。

立春をすぎたこの時期、スーパーやコンビニに並ぶイチゴスイーツに目を奪われ、和菓子屋さんに登場する桜餅や草餅に心躍らせる日々。仏教とお菓子の関係を探ってみたいと思います。

そもそも、お供えってどういう意味があるの?

僧侶はお供えのことを<供物(くもつ)>と呼びます。この供物とは<仏さまにお供えする、お餅やお菓子、果物>のことを指します。供物は<仏様への感謝の心を表すためもの>とされていて、法事や法要の際に登場することが多いです。私がご縁をいただいている浄土真宗本願寺派のご本山、西本願寺(京都)では落雁や羊羹、鏡餅などがお供えされていて、※自坊では最中やどら焼きをお供えすることもあります。
※自坊…自分たちがお護りしているお寺のこと

どこのお寺も和菓子が多いのですが、最近ではチョコレートをお供えしているお寺もありました!

そして、行事ごと、地域ごとに特徴的な供物もあります。お彼岸の<おはぎ>や<ぼたもち>、長野県では、この時期<やしょうま>も登場します。ちなみにこの<やしょうま>、私はつい最近知りました。<やしょうま>はお釈迦さまが亡くなられた2月15日の<涅槃会(ねはんえ)>にお供えされるもので、米粉とお砂糖などを合わせて作られたお団子です。手作りされる方も多く、和菓子屋さんでも販売されます。

お寺と和菓子屋さん

お寺の近くには必ず和菓子屋さんがありませんか?供物でお餅や和菓子が必要になるなら、そりゃそうだ!ですよね。でも、それぞれの和菓子屋さんには、お寺との関係があらわれる<ならではのお菓子>もあります。

西本願寺の境内にある売店では<松風>という和菓子が販売されています。<松風>は、パンのような、カステラのような、素朴かつ上品な和菓子で、西本願寺の歴史と深いつながりをもつお菓子です。
山梨県にある日蓮宗の総本山・身延山久遠寺の参道には<身延饅頭>を販売している和菓子店がたくさんあります。<身延饅頭>は、小麦粉にお醤油や黒糖を混ぜて作る茶色い皮のお饅頭で、身延山で修行する僧侶や、久遠寺にお参りに来る人々のために作られたものと言われています。

お寺にお参りする機会がありましたら、近くの和菓子屋さんを覗いてみるのもおすすめです!その土地ならではの和菓子と巡り会えるかも知れません。

<蘊蓄>になっているかものすごく不安ですが

<やしょうま>をお供えする涅槃会は、旧暦の3月15日に行う地域もあるようです。そして、3月下旬には<春のお彼岸>を迎えるので、<ぼたもち>の出番ですね!クリスマスやハロウィンと比べると仏教の行事は控え目な気もしますが、実はこの春先は、仏教の行事が多い時期です。

もしもスイーツを楽しみながら蘊蓄を傾けたくなったら、お供えのこと、仏教やお寺と和菓子の関係を思い出していただけたら嬉しいです。そして、近所の和菓子屋さんを覗いて、季節の和菓子を味わってみてください。

アバター画像

✍️書いた人

海野 紀恵(うんの・きえ)

浄土真宗本願寺派僧侶・布教使・フリーアナウンサー。 仏教に限らず宗教全般に興味津々。 お酒・おしゃべり・京都が大好き。 SBCラジオ「Mixxxxxx +」(月・木・金)YBSラジオ「プチ鹿島のラジオ19××」出演中。