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もしも愛するペットが死んでしまったら 〜ペット葬運営会社の店長さんに聞いてみた

✍️ 安斎 高志

猫を飼っている。私にとって人生初のペットだ。飼い始めて6年。これだけ長く一緒にいると、もう立派な家族である。

しかし、「家族だ」という割に、もしも死んでしまったらどうしたらよいかまったく知らない。他人のペットの死に立ち会ったことも、葬儀に立ち会ったことも、埋葬に立ち会ったこともない。そもそも葬儀や埋葬はするのか。それすら知らない。人生で初めてペットを飼う人たちは、みんな知らないのではないだろうか。

私は、ペット葬を執り行う「ペットの旅立ち長野店」の花島淳店長のもとを訪ねた。同店は葬儀会社であるブライト信州株式会社が運営している。

土地の所有者がOKなら火葬はどこででもOK 

–ペットを飼うのが初めてなので知らないことだらけなんです。花島店長にお聞きするのも恐縮なんですが、ペット葬というサービスを使わなければ、どうやって埋葬するんですか?

花島さん:ここ長野あたりだと、庭に埋める人が多いと思います。
 

–庭に埋めるって、法的には問題ないんですか?

花島さん:土地の所有者がOKなら問題ありません。人は「墓地、埋葬等に関する法律」で決まりがありますが、ペット(家畜は別)は法的に「物」なので問題ないです。ただ、田舎で土葬をすると野生の動物に荒らされたりすることもあります。

–猫を飼っている身とすると、ごみとか荒らされると聞くとなんだか切ないですね。

花島さん:ペットとの接し方は人それぞれですけど、ペットが亡くなったことで悲しさや喪失感がある方なら、私はやはり人間と同じように火葬して埋葬してあげるのがいいと思っています。

–実際、どんなことをしてもらえるんですか?

花島さん:人間とそんなに違いません。火葬したあと、こちらで埋葬までしてしまうケース、お骨を骨壷に入れてお返しするケースなど、お客様のご要望に合わせていろんなパターンがあります。お骨拾いに立ち会うこともできますし、立ち会わずにお任せいただくことも可能です。ざっくり言うと、お骨をお返しするかどうか、立ち会いの有無、ご遺体の大きさによって料金が違ってきます。

ペット用の骨壷

–どのくらい時間がかかるものなんですか?

花島さん:体の大きさによって違いますが、お引き取りに行ってからお骨をお戻しするまで2〜3時間が一般的です。火葬が終わるまで1〜2時間かかるので、火葬には立ち会わない方もたくさんいらっしゃいます。

–人間の火葬は決まった場所でないとできないですけど、ペットの火葬はどこでどうするんですか?

花島さん:特製の移動火葬車があります。基本的に、土地の所有者がOKならどこでも火葬はできるので、飼い主のご自宅駐車場で火葬することも多いです。それができない場合は、弊社は10ヶ所の葬儀場を運営していますから、その日稼働していない葬儀場の駐車場や所有ビル敷地内、提携寺院でも火葬します。

–住宅街だとご近所の目が気になったりするでしょうし、駐車場をお借りできるのはありがたい人も多いでしょうね。

花島さん:と言っても、煙は本当に少量しか出ないですし、そこまで気にされなくても大丈夫ですよ。さすがに炉は稼働していないですけど、実物を見てみますか?

–いいんですか!?

移動火葬車でそのまま葬儀も

–ぱっと見、普通のバンですね。

花島さん:そうですね。ただ、後部のドアを開けると…。

–すごい!

花島さん:大型犬でも収まるサイズです。で、この写真見てください。後部は祭壇にもなるんです。

–本当に人間の葬儀の小さいバージョンですね。

花島さん:大好きだったおもちゃと一緒に火葬したり、お別れ花でいっぱいにしたり、なるべくお客さまのご要望をお聞きしています。

–このタープのような布はなんですか?

花島さん:屋外でのお骨拾いは、風が大敵でして…。

–そっか…!灰が飛ばされちゃいますもんね。ちなみに、拾ったお骨は皆さんどうするんですか?

花島さん:いろんなケースがあります。海洋散骨をご依頼いただくこともあれば、お寺に埋葬することもありますし、自宅の庭に埋める方、自宅に骨壷のまま置いている方もいらっしゃるようですね。ちなみに、よくご利用いただくのが、こちらの分骨カプセルです。

–これは?

花島さん:お骨のほとんどは埋葬して、少しだけここに入れて身近な場所に置いておくとか、身につけておくとか。

–ずっと一緒にいられるってわけですね…!

葬儀会社が運営するから 

–気になるのは料金なんですが…。

花島さん:そこが私たちも悩みどころで…。

–というと?

花島さん:一応、料金表はあるので、こちらのHP https://bright-pet.com/plan/ を見ていただければ…。

–なんだ。料金表あるんじゃないですか。何を悩むことがあるんですか?

花島さん:先ほどお伝えしたとおり、私ども「ペットの旅立ち長野店」は「お客さまのご要望にできるだけ合わせる」という方針で運営しています。それに加えて、造花ではなく生花を使いますし、オプションではありますが、ご遺体を保護するためにドライアイスをお持ちしたりします。できる限り人間の葬儀と同じようにケアするので…。

–どうしても高上がりになっちゃうってことですか?

花島さん:ほんの少しなんですけどね…。ただ、追加料金なしをうたっているので、最終的にはそこまで高上がりになってしまうわけではないですし、ブライト信州の会員さんは生花がサービスですし、そこまで高上がりではないのですが。

–ただ、初めての人はHPで単純に料金を比べて決めてしまいそうですよね。

花島さん:そう。そして、その「初めて」の方が重要なんです。この業界って実はリピーターが6〜7割でして。

–そうなんですか…!じゃあビジネス的には、初めての人を囲い込まないとなんですね…。

花島さん:葬儀会社が運営するペット葬として、安い料金で燃やして終わりというサービスにはしたくないんです。そこをわかってもらうのが、私たちの現在の課題ですね。

–葬儀会社が運営していると、どんなところが違ってきますか?

花島さん:やはり、人間の葬儀で培ったグリーフケアの部分だと思います。

–グリーフケアってなんですか?

花島さん:ペットロスの方がピンときますかね、一言でいうと死別の悲しみから平常へのプロセスを見守ることでしょうか。私も葬儀会社で長く経験を積んで、ペット葬事業部に異動してきたので、近い人を亡くした方に必要なことはわかっているつもりです。ペットを亡くした人だって悲しみは一緒ですから、そこは葬儀社が行うペット葬として意味があると思っています。

–先ほどの生花の話もそうですけど、そうしたディテール一つ一つで、ていねいに葬ってもらえたという気持ちになりそうですよね。ふだんから心がけていることとかありますか?

花島さん:悲しいと「忘れたい」という気持ちになるかもしれませんが、一番の供養は「忘れない」「思い出してあげる」ということだと思っています。実際、ご遺体を引き取りに伺ったら、2時間ほどペットの思い出話をされて、「お話ししたらやっと気持ちが落ち着きました」とおっしゃっていたお客さまもいらっしゃいました。

–飼い主の気持ち、わかります。

花島さん:人間にも四十九日法要や三回忌法要があるように、定期的に思い出してあげる機会をつくってあげられたらいいなと思っていて、グリーフケアのための企画をいろいろと考えているところです。

–お話を聞いていて、うちの猫も花島さんにお願いしたいと思いました。まだまだ健康ですが。

花島さん:猫ちゃんは何歳ですか?

–6歳です。

花島さん:じゃあ、猫ちゃんの終活を真剣に考えるころ、私は定年を過ぎていると思いますよ(笑)

ペットの旅立ち長野店 長野市稲葉日詰1411-1

電話026-214-2286

https://bright-pet.com/

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✍️書いた人

安斎 高志(あんざい・たかし)

コピーライター、編集者、映像ディレクター。合同会社案在企画室CEO(ちょっとイイこというおじさん)。二児の父。もしもに関する想像力のたくましさは極めつけの折り紙つき、かつ保証つきの太鼓判つき。