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温泉、山菜の苦味、神社仏閣。
私が思い浮かべる、大人になってから魅力を感じるものトップ3です。
担当しているラジオ番組でも、プライベートでも「京都!京都が好き!もう1回住みたい!」と騒いでいる私ですが、京都に住んでいた学生時代、清水寺以外の神社仏閣を訪れた記憶がほとんどありません。本当に残念すぎます。振り返ってみると、当時は河原町で買い物をしたり、木屋町でお酒を飲むことに夢中で、神社仏閣を訪れ、手を合わせるという選択肢すらなかったように思います。
そんな私が僧侶になり、年に数回京都で研修やお仕事をさせていただくようになって、ようやく京都にある神社仏閣の歴史的、文化的な魅力を感じられるようになりました。そして、僧侶としてお仕事をさせていただくなかで「とんでもなく素晴らしい環境にいるんだ!」と再認識することもしばしば。
そこで今回は、私が研修やお仕事をさせていただいている、西本願寺の魅力を語らせてください!
世界文化遺産・本願寺
西本願寺は広すぎて、写真素人の私はいつも全景を一枚に収めることができません。
写真は国宝の阿弥陀堂。ご本尊である阿弥陀如来の木像が安置されています。
西本願寺の正式名称は龍谷山本願寺(りゅうこくざん・ほんがんじ)。浄土真宗本願寺派の本山で、京都駅からは歩いて15分ほどです。1994年に世界文化遺産に登録され、敷地内にある門やお堂のほとんどが国宝や重要文化財に指定されています。本当は、国宝いくつ、重要文化財いくつ、と書きたかったのですが、多すぎてカウントが難しい!とにかく敷地内のほとんどの建物が歴史的、文化的価値の高いものばかりです。
こちらは国宝の飛雲閣(ひうんかく)。
客室や茶室があり、金閣、銀閣とともに京都三名閣の一つに数えられます。普段は非公開なのですが、年に数回、大きな法要の際には公開されて、建物のなかでお茶をいただくこともできます。
西本願寺を味わう
「京都旅を1日コーディネートして」と言われたら、気合を入れて、朝6時から行われる西本願寺の朝のおつとめからスタートさせたいところですが、今回は午前11時からスタート。西本願寺では毎日15分程度の<法話>、仏さまのお話を聞くことができます。法話をするのは、<布教使(ふきょうし)>という、法話について専門的に学んだお坊さんです。西本願寺の御影堂(ごえいどう)では、毎日午前11時から法話が行われています。
この日の法話を担当されたのは、小林顯英(けんえい)師。
小林さんは、多い時には年間50回ほど西本願寺で法話をされているそうです。驚いたのは、小林さんのお話のなかに難しい仏教用語が出てこないこと。小林さんに仏さまのお話をするときに心がけていることを伺うと「話し手と聞き手が同じ絵を頭のなかに描けるように、言葉を選んで語ること」と教えてくださいました。西本願寺には、普段から仏教に親しんでいる方はもちろん、観光客や散歩のついでにふらっと立ち寄る方など様々な人が訪れます。抽象的で難しいと身構えられてしまう仏教のお話を、誰にでも届く言葉で語る小林さん。お話を聞いて涙されている方もいらっしゃいました。お寺を訪れても、建物を見て、お参りをして終わってしまうことが多いと思いますが、法話を聞くとより深く仏教の世界を体感できます。
お坊さんが案内する境内ツアー
法話を聞いた後は、お坊さんが案内してくれる境内ツアー<お西さんを知ろう!>に参加しました。案内してくださったのは浄土真宗本願寺派僧侶の東承子さんです。西本願寺では、1日4回この境内ツアーを行なっています。所要時間は約30分で、無料で境内を案内してもらえます。阿弥陀堂や御影堂といった西本願寺のメインとなる建物についての解説はもちろん、楽しかったのはサイドネタ的な解説です。例えば、阿弥陀堂や御影堂の廊下にある<埋め木>。亀裂や節穴を木片で埋めた修復の跡なのですが、様々な形の木片が埋め込まれていて、見つけた瞬間心が和みます。
もうひとつ教えていただいたのが、西本願寺にある丸太について。少しわかりにくいかもしれませんが、写真の中央に丸太があります。
この丸太、お坊さんが<喚鐘(かんしょう)>の練習するためのものだそうです。喚鐘は、おつとめが始まる時に鳴らされる音の高い鐘です。打つ数やリズムが決められているのですが、これがなかなか複雑で、マスターするためには練習が必要。西本願寺でこの喚鐘を鳴らすお坊さんは、この丸太で練習しているそうです。
境内ツアーでは、このようなお寺の裏側も解説してくれます。教えてもらわなければ気づかなかった!という情報満載でした。
京都のお寺の魅力
いつもお仕事で訪れている西本願寺ですが、改めて日本が世界に誇る寺院であることを実感し、同時に昔からそこにあり、人々が集う身近な場所であることも感じました。京都のお寺というと、観光の名所で、歴史絵巻のなかに飛び込むような、非日常を味わう空間という印象が強かったのですが、西本願寺はその一面も持ちつつ、どこかホッとする人々の日常を感じる空間でした。この実感を得られたのは、お坊さんやお参りに来た人など、西本願にいる<人>とお話をしたからだと思います。
もしも、京都のお寺をディープに楽しみたかったら、お坊さん、案内係の方、売店の方など、人と話してみるのがお勧めです。
✍️書いた人
海野 紀恵(うんの・きえ)
浄土真宗本願寺派僧侶・布教使・フリーアナウンサー。 仏教に限らず宗教全般に興味津々。 お酒・おしゃべり・京都が大好き。 SBCラジオ「Mixxxxxx +」(月・木・金)YBSラジオ「プチ鹿島のラジオ19××」出演中。