もしもに備える大人のWebマガジン、バンゼン？

もしものことを考え始めると、眠れないたちである。備えがないとご飯も喉を通らない。そう、私はネガティブな想像力がたくましすぎるのだ。昨日はわが子が警察に捕まったらどうしたらよいのかを考え始めてしまい、気づいたら夜が明けていた。たまらず私は、法律事務所の扉をノックした。

なお、名誉のために付け加えると、わが子は品行方正そのものである。

お話を聞いたのは、すそ花法律事務所の代表弁護士、有吉美知子さん。依頼者の話をていねいに聞くことを信条としている。

弁護士費用は0円〜

-わが子が警察に逮捕されたら、まずはどうしたらいいですか？

有吉さん：とにかくまずは「当番弁護士」に連絡することをおすすめします。当番弁護士は本人だけでなく、家族も依頼することができます。

-当番弁護士…。聞いたことだけはあります。

有吉さん：長野県では、弁護士会所属の弁護士が365日交代で、24時間以内に被疑者と面談します。家族が依頼する場合は弁護士会に電話、本人なら警察に当番弁護士を呼ぶよう依頼してください。※1

-でも、弁護士費用って高いイメージです…。来てもらうのに、お金はいかほどかかるのでしょう…？

有吉さん：当番弁護士は、初回無料です。

-無料！？

有吉さん：ちなみに、起訴された後に就く「国選弁護人」の弁護費用も、本人が負担するケースはあまり多くないですね。原則としては被告人本人負担なんですが、資力に乏しい場合は負担させないという判決が出るんです。

-思っていたより守られているんですね。

有吉さん：冤罪などの場合もありますし、国家権力と対等にわたり合うには専門家が必要ですからね。

変な言い訳をする前に！

-24時間以内に来てくれるということですけど、やはり初動が大事ですか？

有吉さん：大事ですね。嘘とまでいかなくても、変な言い訳をすると調書に残ってしまう。一度、調書に載ったものは、ひっくり返すのが大変です。たとえ取り調べ中でも、弁護士とは最優先で会わせてくれますから、あいまいなことを言ってしまう前に弁護士と会っておくべきです。

-その場合、気を付けることはありますか？

有吉さん：地元の弁護士にまず相談することですね。ネットで検索すると東京あたりの刑事事件を専門とする法律事務所がヒットして、最後に「無料相談電話」にたどり着くんですけど…。

-東京はダメですか？

有吉さん：ダメではないです。ただ、弁護士が面会のたびに長野まで来ることになります。交通費と日当が弁護士費用に加算されるので、高額になります。

-シンプルな理由でした（笑）

有吉さん：長野県の弁護士さんは皆さん、どんな案件も一生懸命やる人たちばかりなので、できればまずは当番弁護士制度を使うことをおすすめします。もちろん、途中から弁護人を変えることもできますし。

保釈金は返ってくる

-それにしても、留置所や拘置所に長期間、わが子が勾留されていることを考えると胸が痛みます。

有吉さん：行いに心配なところがあるんですか？

-いえ、まったく。ちなみに他人からはネガティブな想像力がたくましすぎると指摘されます。

有吉さん：（笑）。保釈ってご存じですか？

-聞いたことはあります。保釈金を払って、拘置所から出てくる人をニュースなどで見ました。金持ちしかできないんだろうな、と勝手に思っていますが。

有吉さん：あれって、払うんじゃなくて、預けるんです。

-え？返ってくるんですか？

有吉さん：そうなんです。逃げないように預かるものなので、有罪無罪も関係ありません。逃げたときだけ返ってきません。没収されます。

-え！有罪でも返ってくるんですか？

有吉さん：はい。逃げなければ。そして、そのお金を貸してくれる機関もあります。

-驚きの連続です。保釈ってお金持ちの特権だと思っていました。

有吉さん：日本保釈支援協会※2というところで、保釈金の立て替えをしてくれます。手数料はかかりますが。

-（スマホで検索）本当だ。200万円なら手数料は55,000円。

有吉さん：自由が奪われるのはつらいことですから、親としたらできることはしてあげたいですよね。

-ありがとうございました！　これでいつ拘束されても慌てずに済みそうです。あ、うちの子は品行方正なんですが。

有吉さん：先ほどもお聞きしました（笑）。

※1 長野県弁護士会電話026-232-3685（土日祝日は留守番電話ですが、24時間以内に折り返します）
※2 日本保釈支援協会HP

弁護士法人 すそ花法律事務所
長野市妻科962 有吉ビル3階