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もしもお葬式の受付を任されたら

✍️ 安斎 高志

46歳、できるだけ人生経験を積もうと努力してきた。しかし、経験したくてもできないこともある。葬儀の受付がその一つだ。厳かな式に参列者を迎え入れる役割は、望んでなるものではないが、任されたとしたら大人として如才なく果たしたいものである。

もしもその大任を引き受けることになったら、自分はどのように振る舞えばいいのか。またしても心配性の虫が疼きはじめた。

私は中央安楽院の典礼部部長で葬祭ディレクター1級・石坂巧一さんのもとを訪ねた。

受付は「喪家の窓口」

–人生で数分だけ、上司の親族の葬儀で受付をしたことがありまして。受付担当の人が席を外している少しの間だけだったんですが、何を言っていいのかわからず、聞こえないくらいの声で「もにょもにょ」と言いながら頭を下げ続けていました。

石坂さん:基本的には「ありがとうございます」でいいんですよ(笑)。来ていただいてありがとうございます。お心遣いありがとうございます。感謝の気持ちが伝わればそれでいいと思います。

–お香典に関しては、お礼を言おうと思ったんですが「いや、おれのじゃねーな」というツッコミが心の中に入ってしまい…。

石坂さん:葬儀の受付というのは、「喪家」の窓口ですから、親族でなかったとしても親族側の立場で振る舞って大丈夫です。

感謝の気持ちが伝わることが大事

–なるほど、喪家側という立ち位置がわかれば行動もしやすそうです。受付として、ワンランク上の振る舞いなんてものはありますか? ありがとうございます、ってひたすら言い続けるのも能がないと思われそうで、もう一言添えたいです。

石坂さん:ワンランク上の一言ですか…(笑)。一言加えるとしたら「お忙しいところお越しいただいてありがとうございます」とか「急にもかかわらず」とか、天気が悪ければ「お足元の悪い中」とか、普段どおりの言葉遣いでいいと思いますよ。

–あまり肩肘張らなくていいんですかね。なんか神妙にしなきゃとか、葬儀のマナーを守らなくちゃとか、そっちばかり気になってしまって。

石坂さん:確かに「決まりごとを守らなければいけない」と思う人は多いですよね。でも、気持ちが伝わることが大事ですから。

ご縁が深まることが供養になる

–大事なのは、気持ちですね! でも、葬儀って久しぶりに会う人もいるじゃないですか。受付で、「久しぶり!」とか言いながらニコニコしちゃうのはさすがにNGですよね?

石坂さん:それも構わないと思います。ご葬儀は故人を偲ぶのと同時に、故人と関わってきた方々がご縁を深めるところだと宗教家の方がよくおっしゃっています。

–じゃあ、ニコニコしてもいいんですか。

石坂さん:神妙にすることより、ご縁が深まることのほうが供養になると思います。

–少し気が楽になりました。ついでに、参列者として窓口に来た時に何を言ったらいいかもお聞きしておきたいです。

石坂さん:「このたびは御愁傷様です」が最も一般的ですよね。

–「愁傷=嘆き悲しむ」に「様」がついているので、わかるようなわからないような言葉だな、と思ったんですよね。今のお話から考えると、気持ちが伝わる気がしなくなっちゃって。

石坂さん:普段使う言葉でお伝えするなら「お悔やみ申し上げます」ですかね。ただ、繰り返しになってしまいますが、気持ちが伝わることが大事だと思いますよ。寂しさとかこれまでの感謝とか、そういった言葉を率直に口にすることのほうが、故人もご遺族も喜ばれると思います。

–弔電なんかも、常套句より自分の言葉のほうが記憶にも残りますしね。もしものことがあったら、もう少し肩の力を抜いて葬儀に臨みます。ありがとうございました!

まとめ

・受付は「喪家」の窓口として振る舞うのが基本姿勢

・決まりごとより、気持ちが伝わる振る舞いを

・故人がつくった縁を深めることも供養のひとつ

中央安楽院 長野市鶴賀七瀬南部375

電話0120-550-983

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✍️書いた人

安斎 高志(あんざい・たかし)

コピーライター、編集者、映像ディレクター。合同会社案在企画室CEO(ちょっとイイこというおじさん)。二児の父。もしもに関する想像力のたくましさは極めつけの折り紙つき、かつ保証つきの太鼓判つき。