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「自分の通夜は自宅でやりたい」。知人が親からそう言われたという。知人は、親が望むならそうしてやりたいと、どこ吹く風だが、それを聞いた私はまたしても心配性の虫がうずきだした。うちの親も自宅でお通夜をしたいと言いだしたらどうしよう。大して大きな家ではないし、とにかくやることが多いと聞く。
私は不安に駆られて、またしても中央安楽院を訪ねた。私の心配に付き合ってくれたのは、葬祭ディレクター1級の石坂巧一さん。いつもすみません。
自宅での通夜はハードルがたくさん
–もしも自宅でお通夜をやろうと思ったら、しなきゃいけないことがたくさんありますよね?
石坂さん:そうですね。事前にご質問内容は伺っていたので、リストを作っておきました。
1・ご遺体が安置できる部屋(スペース)の確保と片付け
2・夏場はご遺体を少しでも保護する為にエアコンがある部屋を確保する
3・葬儀の打合せができる環境作り
4・葬儀日程が決まったら、親族親戚へ連絡を行う
5・宗教者(お寺さん等)、家族、参列者が座れるスペースと動線の確保
6・宗教者(お寺さん等)が着替えられる部屋を確保する
7・通夜式用の掛け軸や本尊を用意する
8・家に来る人達に見られたくない部分は幕などを使って目隠し
9・出棺の為の動線確保(棺を運んで霊柩車に乗せる為の動線、スペースがあるか)
10・家族や参列者など家に来る人用に飲み物、食べ物を用意
11・10にあわせて食器類の用意
12・家に来る人用の駐車場の確保、あわせてご近所さんに事情説明
13・地区の組長さん等に不幸があった事や葬儀日程の伝達(家族葬なら会葬を控えてほしい旨などもあわせて伝える)
14・門燈や霊燈を出す場合は、玄関先や庭の片付け
15・神棚があるお家では神棚封じを行う
16・役所へ死亡届を提出(基本的に葬儀社が行ってくれるが、自分達で行わないといけない会社もある)
17・とりあえずすぐに必要になるお金の用意(火葬代金やお寺さんへの御布施)
–うわー。予想してたより、たくさんあります。そして地味だけど、どうしたらいいのかわからないことだらけです。
石坂さん:1は本当に基本的なことではあるのですが、ご遺体をご自宅に安置できたとしても、棺桶はそれよりだいぶ大きくなりますから、どうしても入らなかったというケースも発生し得るんです。
–駐車場だって、どこで何台分ほど借りたらいいか…。ほぼ車でいらっしゃるでしょうしね…。
石坂さん:実際は、昔ながらの大きな家屋に住んでいないと難しいことがたくさんあります。しかも、これを1〜4日くらいの間で全部こなさないといけないわけです。
–こりゃ私には無理だ。どうしたらいいですか?
石坂さん:ご親族はどうしてもご自宅でお通夜をやりたいとおっしゃってるんですか?
–いえ、まだ何も。勝手に想像して、心配になりまして…。
石坂さん:…。
–でも、これだけやることがあるとなると、たとえホールをお借りすることにしても不安だらけです。
石坂さん:じゃあ一度、見学にいらっしゃいますか? 喪家はやらなければいけないことがたくさんありますが、私どももだいぶお手伝いできることはあるので、ご安心いただけるかと。
–え!いいんですか?特にまだ予定はないですけど…。
石坂さん:予定がある人はいらっしゃらないので…。小さめの家族葬ホールのほうが、自宅との比較がしやすくていいかもしれません。ぜひ、見学してみてください。
家族葬ホールは便利で快適…!
石坂さん:こちらが「SHION若槻」、家族葬ホールと呼ばれるものですね。
–思っていたより広いです。「家族葬」というから収容人数5人くらいのイメージでいました。
石坂さん:大体、20人くらいはご参列いただけます。駐車場は15台ほどご用意があります。
–地方都市だとどうしても車移動ですし、参列者にとっては助かりますね。
石坂さん:ここでは、お通夜やご葬儀だけではなく、式後の会食などにも対応できます。
–この広さがあれば、ゆったりと食事ができそう。
石坂さん:調理から配膳まで、お任せいただけます。
–自宅で大人数の食事を用意するのは大変ですもんね。それだけでもありがたい。
石坂さん:和室もご用意していますので、宗教家(お坊さんなど)の控室としても使えますし、宿泊して故人に付き添う方がお休みになることもできます。
–テレビもあって、快適そうですね。着替えなんかにも使えそう。
石坂さん:もちろん着替えにも使っていただけますが、ご葬儀前はどうしても着替えたい人がバッティングしますので、別で小さなドレスルームも用意しています。
–めちゃくちゃ気が利いてる…。
石坂さん:こちらのソファはベッドにもなります。
–家族みんなで泊まっても不自由なさそうですね。こっちはバスルームですね。これは快適空間だ…!
ご遺族の負担をできるだけ減らすために
–「お通夜ご葬儀を自宅で」という方はどのくらいいるんですか?
石坂さん:肌感覚で言うと、1割に満たないくらいじゃないですかね。
–それなりにいるんですね。
石坂さん:慣れ親しんだ環境で見送られたいとおっしゃる方はいらっしゃいます。大きめのお宅にお住まいであれば不可能ではありませんし、当社では出張でお手伝いもしてます。そして、ホールで執り行うより、大体1〜2割くらい料金はお安くなりますね。
–にしても、これだけ快適で便利なホールを見てしまうと、頼りたくなっちゃいますね…。
石坂さん:意外なデメリットとしては、葬儀のお知らせを新聞などに載せる際、ご自宅の住所を公表することになるので、そのあと色んな営業が来るという話も聞きます。
–連れ合いを亡くした方が一人暮らしを始めることになったりすると心配ですね…。そういえば、新聞のおくやみ欄への掲載手配も、葬儀会社さんがしてくれるんですよね。
石坂さん:役所への届けなんかもそうですが、一つひとつはそこまで手間なことではありません。ただ、やり方を調べるだけでそこそこ時間を使いますし、リストを見ていただいたとおり、ご遺族のやらなければいけないことは短い期間に集中しますから、私たちとしては少しでもお手間を減らせるようにしたいと考えています。
–もしも、親が「自宅でお通夜を」と言い出したら、私は全力で止めようと思います。
石坂さん:とはいえ、ご本人の思いも大切に…。
–そうですね…。
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SHION若槻 長野市若槻東条1135
電話0120-550-983
✍️書いた人
安斎 高志(あんざい・たかし)
コピーライター、編集者、映像ディレクター。合同会社案在企画室CEO(ちょっとイイこというおじさん)。二児の父。もしもに関する想像力のたくましさは極めつけの折り紙つき、かつ保証つきの太鼓判つき。