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もしも龍に会いたくなったら

✍️ 海野 紀恵

もしも度:🐉🐉🐉

今年は辰年

2024年がスタートして約1ヶ月。
お正月モードはすっかり抜け、寒さと闘う日々ですね。
さて、年のはじめに注目されるのが「干支」。今年は辰年です。テレビやラジオでは「十二支のなかで唯一架空の生き物」と紹介されています。
でも龍は、動物園で会えなくても、お寺の天井絵や彫刻のモチーフになっていて、ペガサスや鳳凰と比べると身近な存在なのではないでしょうか?

でも、なぜお寺や神社に龍がいるのか?
そういえば龍ってどこのお寺や神社にもいるの?
僧侶の私もたくさんの<?>に取り囲まれてしまいました。お恥ずかしい。
そこで、龍神様をおまつりしているというお寺にお邪魔して、ご住職にお話を伺ってきました。

龍神様にお会いできるお寺

お邪魔したのは、天竜川が流れる(竜つながり!)伊那市福島にある理性山三澤寺。
日蓮宗のお寺です。
なんと!三澤寺には龍神様が祀られています。興味津々、大興奮です。

ご住職の武田正幹さんは千葉県のご出身で、2019年に伊那へ移り、三澤寺を護られています。

早速本堂へお邪魔すると……。龍神様がいらっしゃいました!!

高さ約150センチの龍神様。木像ですが、艶のある鱗、そして潤いのある瞳に一気に引き込まれました。大空を舞って、今ここへ帰ってきたばかり、という躍動感も感じます。美しく、力強いお姿に圧倒されました。

この龍神様、2022年からこの場所にご安置されているそうです。
そのご縁は、ご住職がみた<夢>にあったようです。

龍神様が現れた

日蓮宗には<水行>という寒空のもと、水をかぶる修行があります。

三澤寺に移り住み、伊那での布教の決意を固めるために水行をしていたご住職。ご住職は<荒行>という日蓮宗のとても厳しい修行を経験されていますが、信州の寒さは別格で、三澤寺での水行はとても大変なものと感じられたそうです。

そんなとき、ご住職は決まって不思議な夢を見るようなります。
夢の中でご住職は水行をしています。そこへお爺さんが本堂から出てきて水行を見守ると「わしはここが気に入ったから住むことにする」と言ったそうです。

この夢を何度も見たこと。夢では必ず水行をしていて、いつも同じお爺さんが登場したことから、ご住職はこのお爺さんが水と風を司る龍神様なのではないか、と思うようになり、木造を作って龍神様をお迎えしたということです。

さらに、龍神様のお姿は蝋燭にも!
ご住職がお勤めをするときに灯す蝋燭が、龍の形に溶けるそうです。

ご住職によると、これは龍神様が降臨され、お寺の参拝者をお守りしている証だそうです。私も普段のお勤めで蝋燭を灯しますが、こんなふうに溶けたことがないので、本当に不思議です!

仏教のなかの龍神様

ここまで読んでくださった読者の皆さま、「あれ?お寺にいらっしゃるのって仏様じゃないの?神様は神社なんじゃないの?」と疑問に思われたのではないでしょうか?

実は、仏教経典のなかには多くの神様が登場します。
仏教は現在のインドで生まれ、中国を経由して日本に伝わりました。
その過程で、それぞれの地域に元々根付いていた信仰と結びついて、今の仏教の形になっています。

龍神様は『法華経』という経典のなかに登場されます。
『法華経』のなかでは8人の龍神様を<八大龍王>と呼んでいて、この<八大龍王>は仏法をお守りするという役割を担っています。

また、日本には古来から<八百万の神>に象徴されるように<すべてのものに魂・神様が宿っている>という宗教観がありました。そのなかに<龍神様は水や風を司る神さま>という信仰もあり、仏教経典に登場する龍神様と、日本で古来から信仰されていた龍神様が合わさって、日本でも広く親しまれるようになったと考えることができます。

ちょっと難しい話になってしまいましたが……。

ご住職が龍神様をお迎えするまでには、多くの難題が立ちはだかったそうです。
しかし、決して諦めることなく向き合った結果、不思議とご縁がつながり、無事に龍神さまをご安置することができました。このことから、三澤寺の龍神さまは<結縁成就>の神様とされています。

もしも龍に会いたくなったら。
天竜川の近くで人々を見守る、三澤寺の龍神様をお参りしてみては?

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✍️書いた人

海野 紀恵(うんの・きえ)

浄土真宗本願寺派僧侶・布教使・フリーアナウンサー。 仏教に限らず宗教全般に興味津々。 お酒・おしゃべり・京都が大好き。 SBCラジオ「Mixxxxxx +」(月・木・金)YBSラジオ「プチ鹿島のラジオ19××」出演中。