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ライターという仕事柄、さまざまな人に取材を行ってきた。
年齢や職業もいろいろ。世の中の不条理に声をあげる人、自らのビジョンを追う人……多種多様な生き方に出会ってきた自負がある。
しかし、そんな私にも、まだ取材できていない人物がいる。それが、3歳になる娘だ。いつも忙しなく動き、遊び、泣く彼女は、一体世の中をどのように捉えているのか?そして、何を考えているのか?これまで私が積み重ねてきた取材スキルの集大成を、彼女にぶつけたい。
早速、何やら取り込み中の3歳児に取材を実施した。
“うらかね”で振る舞われたおやさい
ーー今日はお願いします。
娘氏:うん。
ーーまずは昨今の経済情勢からお聞きしましょう。このところ景気が低迷し続けていますが、いかがですか?
娘氏:やだ!
ーー語気が強い……たしかに、いやですよね。
娘氏:(もくもくと作業)
ーーこ、これからの経済はどうしたらいいですかね……?
娘氏:どうしたらいい、じゃないでしょ!
ーーすみません、ちょっと他人任せだったかもしれません。自分から経済を回していきます。
娘氏:(もくもくと作業)
ーーあの……あと、最近は裏金問題なんかもありますよね。
娘氏:うらかね?
ーーえーっと、内緒でもらうお金って言ったらいいですかね。
娘氏:あたしも、おかねもらったよ。
ーーえ、裏金もらったんですか!
娘氏:うん、パパからもらったじゃん。ほら。
ーーあ、これはたしかにパパがあげた“うらかね”……!
娘氏:これは、だいじだいじなの。
ーーこの“うらかね”は何に使うんですか?
娘氏:おやさい。
ーーまさかの食料品!
娘氏:おやさいあげる。はい、どーじょ。
ーーありがとうございます。“うらかね”で買ったおやさいを頂いてしまった。これも内緒にしてください。
いつか、おおきくジャンプして、カーテンをつける。その夢に向けて
ーーそういえば、どんな肩書きなんですか?
娘氏:お料理やさん。
ーー“うらかね”でおやさい買っていましたしね。
娘氏:うん。
ーー得意なジャンルはなんですか?
娘氏:あったかいやつ。
ーーあのおやさいは温野菜だったんですね。
娘氏:いま、ぐつぐつしてるから、ちょっとまってて。
ーーあ、調理中失礼しました。
娘氏:はい、どーじょ!
ーーあ、おかわりもすみません、ありがとうございます。ご自身は、今後どのようなキャリアを歩みたいと思っていますか?
娘氏:ミニーちゃん。かわいいやつ。
ーー料理家からマスコットキャラクターへ大胆なキャリアチェンジですね。ミニーさんになって、どんなことにチャレンジしたいですか?
娘氏:えっと……ジャンプ!
ーージャンプ!
娘氏:おおきなジャンプしたいの。
ーーいいですね。ぜひ将来、おおきなジャンプを見てみたいです。
娘氏:うん。
ーーおおきなジャンプの先に、どんな世界が見られそうですかね。
娘氏:えっと……カーテンつける!
ーーおおきくジャンプできたら、高い出窓にもカーテンをつけられますもんね。調理中ありがとうございました!
まとめ
いざ試みた3歳児への取材。さすがに一筋縄ではいかなかった。
いかに彼女が構築している世界観を守りつつ、そこに参加するか。いかにとりとめのない言葉を受けとめつつ、文脈を紡いでいくか。そんなインタビュアーとしての姿勢を問い直される取材だった。3歳児から学ぶことも、非常に多い。
✍️書いた人
小林拓水(こばやし・たくみ)
「toishi」という屋号で活動しているコピーライターです。1990年生まれ。長野と東京を行ったり来たりしながら暮らしています。パンが大好き。