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もしもテキーラ沼にハマったら

✍️ 小林 拓水

もしも度:🍸🍸🍸🍸

ビール、日本酒、ウイスキー、ジン……馴染みのあるお酒もいいけれど、あまり手を出したことのないお酒の世界も覗いてみたい。そんなことをふと思って、今回目を付けたのがテキーラだ。

勝手ながらテキーラには「クラブで仲間同士踊りながら飲むお酒」のような先入観を持っている。根暗な僕には縁遠く感じてしまう、このお酒だからこそ、足を踏み入れればきっと興味深い世界が広がっているはず。そこで、テキーラ系YouTuber「WhiteBearTequila」のナチョさん・準さんに話を聞きに行った。

そもそもテキーラって、どんなお酒?

▲お2人の事務所の棚にはテキーラのボトルがずらり。

ナチョさん:テキーラ、飲みます?

——あ、ありがとうございます。

ナチョさん:テキーラビギナーは、まずソーダ割りがおすすめです。どうぞ。

——あ、飲みやすい。テキーラって、ショットでクイッと飲んで、すぐにライムをかじらないといけないと思っていました。

準さん:その飲み方ばかりじゃないんですよ。むしろテキーラの本場メキシコでも、ソーダ割りで飲んでいる人は多いです。

▲テキーラを並べてお話してくれるナチョさん(左)と準さん(右)。

——それは意外でした。そもそも、テキーラってどういうお酒なんですか。

ナチョさん:テキーラは、「アガベ」と呼ばれるメキシコ原産の多肉植物を原料にした蒸留酒のこと。あと、同じ原料・製法でも、メキシコ国内の5州で生産されたものしか「テキーラ」と名乗ることはできません。

準さん:2023年には、僕たちもメキシコに渡って現地のアガベ畑を見に行きました。
ナチョさん:アガベを収穫する職人を、現地では「ヒマドール」と呼んでいます。穂先が円形で槍のような「コア」とよばれる大きな刃を使って、アガベの葉を切り落としていくんですが、これが難しいんですよ。

▲現地でヒマドール体験をするナチョさんたち。

準さん:葉の残し方によってテキーラの風味が変わってくるんです。ヒマドールの人たちは絶妙に葉の残し方をコントロールしながら、手際よくバッサバッサと切り落としていく。まさに職人技です。

テキーラは、フロンティア

——ちなみに、なんでお2人は、他のお酒よりもテキーラが好きなんですか?

ナチョさん:テキーラって開放的な気持ちにしてくれるんですよね。初めて会う人とも、テキーラを飲み交わしたら仲良くなれる気がする

——たしかにメキシコ人も、開放的で陽気なイメージがあります。

準さん:月に何回か、僕たちの事務所に、全国各地にいるテキーラ仲間を呼んで一緒に飲んだりするんです。気づいたら、音楽をかけてみんなで踊ったりしていて。


▲事務所パーティの図

——みんなメキシカンになっているじゃないですか。

ナチョさん:しかも、パリピじゃない人ばかり。僕たちも根暗ですし。

準さん:そうそう。音楽もクラブミュージックじゃなくて、J-POPですしね。

——たしかに、今この部屋では、TM NETWORKの「Get Wild」が流れていますね。

ナチョさん:気の合う仲間が集まって、青春時代のJ-POPを流して、楽しい時間を共有する。それが、テキーラコミュニティのいいところなんですよね。

——僕も根暗なので、テキーラコミュニティに入って行けるような気がしてきました。

ナチョさん:テキーラは、かなりニッチなお酒。コンパクトな業界だから、みんなでひとつの世界観を共有するひとつのコミュニティが生まれやすいと思います。

▲ビギナーにおすすめなテキーラ「アガバレス」。
▲ちょっと深入りしたい人におすすめなテキーラ「カスカウィン」「G4」「フォルタレサ」。

準さん:テキーラ業界で活動している人とはすぐに繋がれますし、第一人者にもすぐに会えますからね。

ナチョさん:テキーラ自体まだまだ日本国内に情報が少なくて、自分たちで最新情報の取り方から確立しないといけない業界なんですよね。言い換えるとテキーラは未開拓、フロンティアということです。

——お酒界のフロンティア!

住んでいる街ごとテキーラ沼に

——それにしても、どうしてこんなにテキーラにハマったんですか?

ナチョさん:以前働いていた会社の社長にバーに連れて行ってもらって、初めてアガベ100%のプレミアムテキーラを飲んだのがきっかけです。その場では罰ゲームとして飲んだのですが、あまりの美味しさに驚いて。「これ、めちゃくちゃ美味いです!」って言いながら、何杯も飲んだんです。

▲そのときに飲んでいたという「ポルフィディオ アネホ」のボトル。

——めちゃくちゃ酔っ払いません?

ナチョさん:当然酔っ払ったんですが、翌朝にはシャキッと目が覚めて、二日酔いが全然なかったんです。あれだけ美味しいお酒をたくさん飲んでも、気持ちよく起きれたことが衝撃で、もう一度この体験を再現したいと思って、自分で1万円くらいのテキーラを買ったとき新しい扉を開けた気がしました。

——テキーラ沼の入り口に。

ナチョさん:しかも、ちょうどその直後にテレビ番組でアジア人初のテキーラ職人・景田哲夫さんの特集が放送されたんです。何のツテもなく、スペイン語も話せないまま単身メキシコに渡った結果、ご本人の努力によって100年以上の伝統を持つ名門蒸留所のスタッフとして招き入れられた……そんなエピソードを目の当たりにして胸を打ち抜かれたような心地がして。

——テキーラ沼の入り口に立ったタイミングで、そのエピソードはたしかに心に響くかもしれませんね。

ナチョさん:衝撃が強すぎて2週間くらいボーッとしちゃって。ある日「俺、何やってるんだろう。このままじゃダメだ」と思い至り、当時子どもが生まれたばかりだったんですけど、妻に「俺、会社辞めるわ」って言って退職しちゃったんです。

▲メキシコにて、憧れの人・景田さんに会いに行ったときの動画。

——テキーラの沼にがんがん入っていますね。

ナチョさん:もともと本業でやっていたECサイトの立ち上げやWeb制作の仕事をしながら、テキーラを飲み続ける日々。その頃に準ちゃんを会社メンバーとして迎え、テキーラ沼に引きずり込んでいきました。

準さん:最初は正直「テキーラかぁ……」と思っていたんですけど、「氷の溶け方によって味わいが変わるから試してみな」なんて言われて飲んでみたら、たしかにそう。「これはおもしろいな」と思って、気づいたらすぐに僕も沼にハマっていました。

ナチョさん:そこからは指数関数的にテキーラを飲む量も頻度も増えていって。そのうちに「事務所だけじゃなくて好きな店でも飲みたい」と思って、行きつけの酒場で店主にテキーラの良さをアピールして仕入れてもらうようにしたり。

準さん:実際に近所にある行きつけの何軒かの酒場では、実際にプレミアムテキーラを仕入れてくれていて。その店では「ソーダ割りをお願いします」って言うと、焼酎でも梅酒でもなくテキーラのソーダ割りが出てくるんです。

▲実際にお2人が行かれている酒場で出されたテキーラ。

——街ごとテキーラ沼に沈めている!でも、小洒落たバーや賑やかなクラブじゃなくて、親近感のある居酒屋でおいしいテキーラを飲めるのはいいですね。しかも、ソーダ割りって飲みやすそうですし。

準さん:そうなんですよ。テキーラのソーダ割りって、食中酒としてかなり優秀で何にでも合う。タコスのような味が濃いメキシカンな料理だけじゃなく、あっさりとした日本料理にもかなり合うんです。

ナチョさん:スーパーで買った鮨が1万円くらいの鮨に感じられますからね。

——テキーラのポテンシャルがすごい!今日はありがとうございました!

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取材協力:WhiteBearTequila

YouTubeチャンネル「WhiteBearTequila ~テキーラに人生を捧げる者たち~

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✍️書いた人

小林拓水(こばやし・たくみ)

「toishi」という屋号で活動しているコピーライターです。1990年生まれ。長野と東京を行ったり来たりしながら暮らしています。パンが大好き。